書類・面接

50代の職務経歴書はなぜ落ちる?書き直しの結論

健一さん(48歳・メーカー勤務の課長)は、初めて書いた職務経歴書をプリントアウトして持ってきた。A4で5枚。入社からの異動歴、担当製品、社内プロジェクトがびっしり並んでいる。「20年分、全部書きました」。誇らしげな健一さんに、倫子さんは一枚めくって、静かに言った。「健一さん、これ、読む人のことを考えて書きましたか?」

この記事は4つの出口のうち「転職」を扱います
なぜ50代の職務経歴書は「長いのに伝わらない」のか
健一さん
健一さん
えっ、ダメですか。漏れなく書いたつもりですが。
倫子さん
倫子さん
結論から言うと、45歳以上の職務経歴書で一番多い失敗は、書き漏れではなく「書きすぎ」です。理由を説明しますね。書類を最初に読むのは、多くの場合、健一さんより10歳以上若い人事担当者かエージェントです。1通にかける時間は数十秒。その数十秒で「この人は何の専門家か」が伝わらなければ、20年の実績も読まれずに終わります。
健一さん
健一さん
数十秒……。5枚も読んでもらえないですよね。
倫子さん
倫子さん
はい。だから設計を変えます。冒頭に「職務要約」を5〜6行置き、そこで勝負を決める。自分は何の専門家で、どんな成果を出してきて、御社で何ができるか。この3点を要約で言い切り、後ろのページは証拠資料と割り切る。読む人は要約で興味を持ったら詳細を読む、という順番です。
健一さん
健一さん
異動歴を時系列で並べるんじゃなくて。
倫子さん
倫子さん
時系列は後半でいいんです。もう1つ、経験の棚卸しは直近だけでなく10年以上さかのぼってください。キャリア全体を通じて「自分は何の専門家か」を一言で言えることが、ミドルの転職成功の最大の鍵とされています。健一さんなら「現場を動かせる企画者」。この一言が要約の一行目です。

今日やること

  • 職務経歴書の冒頭に5〜6行の「職務要約」を書く
  • 全体をA4・2枚以内に削る。削った内容は面接で話す弾として別メモに残す
実績の書き方——「やったこと」ではなく「変えたこと」
健一さん
健一さん
中身はどう直せば。「◯◯を担当」「◯◯に従事」ばかりになってしまって。
倫子さん
倫子さん
ミドルの書類が通る条件はシンプルで、成果を数字で語れているかです。「担当した」は事実の記録であって、実績ではありません。書き方の型は「課題→行動→数字の変化」です。
たとえば「生産管理システムの導入を担当」ではなく、「納期遅延が月20件発生していた2部門の調整役として導入を主導し、遅延を半減させた」。数字が正確に思い出せなければ、規模感でも構いません。「約」「◯割」で十分です。
健一さん
健一さん
数字にできない仕事もありますよね。部下の育成とか。
倫子さん
倫子さん
できます。「育成した部下5人のうち3人が課長に昇進」「離職が続いていた係で、着任後2年間離職ゼロ」。人の変化も数字になります。それでも書けないものは、思い切って削る。全部を見せようとするから、強みがぼやけるんです。

今日やること

  • 主な実績3つを「課題→行動→数字の変化」の型で書き直す
  • 「担当」「従事」「携わる」を検索して、すべて動詞を言い換える
面接の最初の壁——年下面接官への話し方
健一さん
健一さん
書類が通ったとして、次は面接ですよね。実は想像すると一番気が重いのがこれで。面接官がもし30代だったら、どんな顔をすればいいのか。
倫子さん
倫子さん
ここは、はっきり言いますね。45歳以上の面接で採用側が見ているのは、能力だけではありません。「この会社に馴染める人か」です。自己主張が強すぎたり、周りの意見を受け入れる姿勢が見えなかったりすると、「扱いづらい人材」と判断されて、それだけで終わります。
健一さん
健一さん
実力以前に、そこで切られると。
倫子さん
倫子さん
はい。逆に言えば、対策は明確です。ポイントは謙虚さと自信のバランス。実績は堂々と話す、でもやり方への固執は見せない。具体的には3つ。1つ目、過去の会社の自慢話と前職の批判は一切しない。2つ目、「前の会社ではこうだった」ではなく「御社のやり方をまず教わりたい」と言えること。3つ目、年下の面接官にも、取引先の担当者と同じ敬意で接すること。面接官は「この人が自分の部下になったら、あるいは自分が上司になったら」を想像しながら聞いています。
健一さん
健一さん
火曜に聞いた「年下上司への切り替え」、面接の時点でもう試されてるんですね。
倫子さん
倫子さん
その通りです。面接は入社後の予行演習として見られています。

今日やること

  • 「前職ではこうだった」を封印し、「御社では」で始める言い換えを3つ作る
  • 想定問答を1人で声に出して練習し、話が2分を超えていないか測る
一番差がつく質問——「あなたの経験をうちでどう活かせますか」
健一さん
健一さん
面接で聞かれて一番困りそうな質問って何ですか。
倫子さん
倫子さん
「当社で何ができますか」です。ここでミドルの面接は決まります。多くの人が自分の実績の説明を繰り返してしまう。でも面接官が聞きたいのは過去ではなく、その経験が御社でどう活きるかへの変換です。
型はこうです。「私の◯◯の経験は、御社の△△という課題に、□□という形で貢献できると考えています」。この文を作るには、応募先の課題を調べておく必要があります。中期経営計画、採用ページ、社長インタビュー、業界ニュース。45歳の応募者が下調べをして来たかどうか、面接官は一発で見抜きます。
健一さん
健一さん
20年の経験より、その30分の下調べのほうが差になると。
倫子さん
倫子さん
経験は皆持っています。変換して見せられる人が少ないんです。それと最後に1つ。「何か質問はありますか」で「特にありません」は禁句です。「入社後3ヶ月で期待される成果は何ですか」のように、働く前提の質問を2つ用意しておいてください。

今日やること

  • 第一志望の会社の課題を調べ、「経験→御社の課題→貢献」の変換文を1つ作る
  • 逆質問を2つ用意する
書類と面接は、4つの出口すべてで使う道具
健一さん
健一さん
今日の話は「転職する人」向けですよね。僕はまだ残る可能性も高いんですが。
倫子さん
倫子さん
いい質問です。実はこの技術、4つの出口すべてで使います。①残る人にとって、翻訳済みの職務経歴書は市場価値の定点観測の道具であり、社内公募や異動面談でもそのまま効きます。②転職する人には言うまでもなく本番の武器。③複業を始める人は、プロフィール文と商談がまさに書類と面接です。④独立する人にとっては、営業資料と受注面談そのもの。「自分の経験を、相手の課題に変換して伝える」技術は、後半戦の共通スキルなんです。
健一さん
健一さん
転職するかどうかに関係なく、やる価値があると。
倫子さん
倫子さん
はい。そして健一さん、最初の5枚の職務経歴書、あれは無駄ではありません。全部書き出せたから、削れるんです。材料が揃った人の推敲は速い。20年分の材料は、もう机の上にあります。あとは読む人に届く形に磨くだけ。後半戦は、ここからですよ。

この記事の「今日やること」まとめ

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  • 職務経歴書の冒頭に5〜6行の「職務要約」を書く
  • 全体をA4・2枚以内に削る。削った内容は面接で話す弾として別メモに残す
  • 主な実績3つを「課題→行動→数字の変化」の型で書き直す
  • 「担当」「従事」「携わる」を検索して、すべて動詞を言い換える
  • 「前職ではこうだった」を封印し、「御社では」で始める言い換えを3つ作る
  • 想定問答を1人で声に出して練習し、話が2分を超えていないか測る
  • 第一志望の会社の課題を調べ、「経験→御社の課題→貢献」の変換文を1つ作る
  • 逆質問を2つ用意する

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