複業

45歳からの複業の始め方——週末1件から経験を売る

金曜の夜、健一さん(48歳・メーカー勤務の課長)は同期との飲み会で驚く話を聞いた。隣の部署の同期が、週末に中小企業向けの生産管理セミナーの講師をしていて、月に数万円の報酬を得ているという。「あいつ、俺と同じような仕事してたのに」。月曜の面談で、健一さんはどこか悔しそうに切り出した。

この記事は4つの出口のうち「複業」を扱います
45歳からの複業は「稼ぎ」ではなく「実験」
健一さん
健一さん
正直、複業って小遣い稼ぎのイメージでした。でも同期の話を聞いて、なんというか、悔しくて。
倫子さん
倫子さん
その悔しさの正体から話しましょう。健一さんが羨ましいのは月数万円ではなく、同期が「会社の外で値段がついた」ことですよね。結論から言うと、45歳からの複業の目的は、収入より先に実験です。得られるものが3つあります。
1つ目、市場価値の実測値。転職サイトのスカウトは推定値ですが、複業の報酬は「会社の看板なしの自分」についた実際の値段です。2つ目、社外の居場所。役職定年の回で話した「社内の変化がダメージの100%にならない状態」を、収入付きで作れます。3つ目、実績。複業でやった仕事は職務経歴書に書けます。45歳以降の「社外でも通用する証拠」として、資格より雄弁なことが多いんです。
健一さん
健一さん
収入は3番目以降なんですね。
倫子さん
倫子さん
最初の1年は、月数千円でも成功と考えてください。値段がつくこと自体が成果です。金額を追うのは、型ができてからで十分です。

今日やること

  • 複業の目的を「実験・居場所・実績・収入」の順で紙に書き、家族に宣言する
「会社にバレないか」ではなく「会社に認められて始める」
健一さん
健一さん
でも、うちの会社で複業なんてやってる人、聞いたことがなくて。こっそりやるしかないのかなと。
倫子さん
倫子さん
そこは、はっきり止めます。隠れてやるのは絶対にだめです。理由は倫理だけではありません。就業規則違反での処分リスクは、45歳以降のキャリアにとって、複業で得られるどんな利益より重い。だから手順はこうです。
まず就業規則の副業・兼業の規程を確認する。禁止か、届出制か、許可制か。届出制・許可制なら、正面から申請します。申請のコツは、会社が心配する3点——本業への支障、競業、情報漏洩——を先回りして潰した計画にすること。「平日夜と週末のみ、月◯時間以内」「自社と取引関係・競合関係のない相手」「本業の情報は一切使わない」。この3行があるだけで、通り方が変わります。
健一さん
健一さん
全面禁止だったら、諦めるしかないですか。
倫子さん
倫子さん
選択肢は残ります。報酬を伴わない活動——業界団体の活動、勉強会の運営、地域活動——は多くの場合、副業規制の対象外です。「社外で頼られる実験」は無報酬でもできます。それから、国は副業・兼業の普及を促進する立場で、ガイドラインも公表しています。禁止規程が形骸化している会社では、人事に相談すると案外道が開けることもあります。

今日やること

  • 就業規則の副業・兼業規程を確認する(禁止/届出制/許可制のどれか)
  • 届出制・許可制なら、会社の懸念3点を潰した申請文の下書きを作る
何を売る?20年の経験を換金する4つの型
健一さん
健一さん
やるとして、僕に売れるものがあるんでしょうか。プログラミングみたいな手に職があるわけでもないし。
倫子さん
倫子さん
45歳の複業で売るのは、スキルより経験の使い回しです。型は4つあります。
1つ目、顧問・アドバイザー型。中小企業に月1〜2回訪問やオンラインで助言する形です。顧問マッチングのサービスも複数あり、生産管理、品質、調達、営業管理といった「大手で仕組みを回してきた経験」への需要は根強くあります。
2つ目、業務委託型。助言ではなく手を動かす形。資料作成、業務マニュアル整備、採用の手伝いなど。単価は時間換算になりやすいですが、始めやすさは一番です。
3つ目、講師・執筆型。健一さんの同期がこれです。社内で後輩に教えてきた内容は、他社の若手にとってはお金を払う価値のある知識です。商工会議所や業界団体のセミナー、企業研修、専門誌への寄稿。
4つ目、スキルシェア型。スポットコンサルのプラットフォームに登録し、1時間単位で相談に乗る形。実績ゼロから始めやすく、市場の反応テストに向いています。
健一さん
健一さん
どれから始めれば。
倫子さん
倫子さん
4つ目のスポット相談で小さく値段を確かめて、手応えのある領域を1〜3の型に育てる。この順番が失敗しにくいです。

今日やること

  • 「社内で人に教えたことがあるテーマ」を5つ書き出す
  • スポットコンサルのサービスを1つ調べ、自分と似た経歴の人のプロフィールと単価を見る
時間とお金の現実——続けられる設計にする
健一さん
健一さん
時間、続けられるかが不安です。平日は残業もあるし、週末は家族との時間もあるし。
倫子さん
倫子さん
現実的な上限から設計しましょう。本業に支障が出ない目安は、週5時間前後です。土曜の午前2〜3時間と平日夜1〜2回。これで月20時間。スポット相談なら月数件、顧問なら1社分です。この枠を超える依頼は、断る勇気が複業を続けるコツです。
お金の話も2つだけ押さえてください。1つ目、税金。会社員の場合、給与以外の所得が年間20万円を超えたら確定申告が必要です。所得は売上から経費を引いた額。帳簿といっても最初は収支のメモで十分です。2つ目、住民税。複業分の住民税の扱いは市区町村や申告方法で変わるので、届出して始めていれば気にする必要はありません。これも「隠れてやらない」ことの実利です。
健一さん
健一さん
週5時間なら、通勤時間とスマホを眺めてる時間で捻出できそうです。
倫子さん
倫子さん
それから、家族への説明を忘れずに。週末の数時間を使う話ですから、目的と上限時間を共有しておく。応援団になってもらえるかどうかで、続く確率が大きく変わります。

今日やること

  • 自分の週間スケジュールに「複業枠・週5時間」を実際に書き込んでみる
  • その枠を家族に見せて相談する
複業は4つの出口すべての「実験場」
健一さん
健一さん
複業って、4つの出口で言うと③ですよね。でも僕はまだ①残る、が本線で。
倫子さん
倫子さん
複業の面白いところは、③でありながら他の3つの実験場でもあることです。①残る人にとっては、社外の評価を知った上で残るという最強の状態を作れます。社内の理不尽への耐性も、不思議と上がります。②転職を考える人には、応募前に業界の内側を見る偵察になります。複業で関わった会社から声がかかる、という転職経路も実際にあります。④独立を夢見る人には、顧客ゼロ・収入ゼロから始める独立と違い、会社員のまま顧客と売上の種を育てられる、最も安全な予行演習です。
健一さん
健一さん
やってみて向いてなければ、やめればいいだけですしね。
倫子さん
倫子さん
そうです。撤退コストがほぼゼロの実験なんて、45歳の人生にはめったにありません。同期を羨ましがる金曜日から、自分の値段を確かめる土曜日へ。小さく始めてください。後半戦は、ここからですよ。

この記事の「今日やること」まとめ

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  • 複業の目的を「実験・居場所・実績・収入」の順で紙に書き、家族に宣言する
  • 就業規則の副業・兼業規程を確認する(禁止/届出制/許可制のどれか)
  • 届出制・許可制なら、会社の懸念3点を潰した申請文の下書きを作る
  • 「社内で人に教えたことがあるテーマ」を5つ書き出す
  • スポットコンサルのサービスを1つ調べ、自分と似た経歴の人のプロフィールと単価を見る
  • 自分の週間スケジュールに「複業枠・週5時間」を実際に書き込んでみる
  • その枠を家族に見せて相談する

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